霊的糧
マルコ・アントニオ・マルティネス神父
どこかで聞いたことのある話を今一度みなさんと分ち合いたいと思います。
信者同士の話です。
一人の信者がこんな意見を持ち出しました。「私は30年間、休むことなく毎週ミサに与かってきました。これでもう十分だ。これ以上教会に行く必要はないと思います」。
するともう一人の信者が訊ねた。「どうしてですか」。
先の信者が答えた。「この30年間で3千回以上の説教を聴いていると思います。その上、毎週3つの聖書の朗読も聴きました。でも聴いたはずの説教のことを何も憶えていないんです。自分のためにも神父さまのためにもほんとうに時間の無駄だと思います」。
これを聞いた他のもう一人の信者が口を挟んだ。「私は30年結婚生活をおくっています。この30年の間に私の女房は3万2千回の食事を作っています。でもつい先週何を食べたか憶えていません。でも、その食事によって元気が湧いてきて、毎日の仕事をすることができました。その食事がなかったら、とうの昔に死んでしまったに違いない。毎日食事を作ってくれる女房に感謝してますよ」。
キリスト信者である私たちは、神のみ言葉を聴くたびに霊的な糧の力を与えられています。ごミサの度に説教と聖書朗読のことばによって、それを思い出すことができないとしても、力を与えられ、その力によって信仰を守り、神さまのいつくしみの証しをすることができるのです。
人はパンのみよって生きるのではない。神の口から出る言葉によって生きる。
神さま、私たちに日々の糧をお与えください。
「シャローム」2008年06月号掲載